今の所、一般的な定義は確立していないと了解しています。あくまで当研究所としての見解を述べます。
広い定義:「国家が、その国家目標を達成するために、他の国家に対して影響力を与えるために、軍事力ではなく経済的な手法を用いること、及び、逆にそのような手法に対して防衛すること」と定義できると考えます。
狭めの定義:金融制裁や禁輸・懲罰的な関税などの輸出入規制、Economic statecraftの訳語と考えます。
日本人的な感覚では、国家が成長し、経済発展を遂げた結果、他国に影響力を持つようになったということにはあまり違和感をもたないでしょう。しかしながら、下記のような問題が現実に起きつつあり、企業の事業展開に現実的な影響が出てきています。
(1) 技術窃盗: 中国が経済力発展の前提となる技術を違法に取得している。
(2) サプライチェーン工作: 経済を武器化する一つの手法として、一定の資源・生産品の「独占」状況を「国家戦略」として作り出している。
(3) 貿易関連法務の複雑化: 米国が様々な新しいタイプの制裁や輸出規制を複雑化することにより、国際貿易の法務対策により注意が必要となってきている。
(4) 新たなサプライチェーン構築:米国は「米国にとって安全な」サプライチェーン確保政策を取りつつあります。これが結果として、(2)のサプライチェーンの問題を増幅し、それぞれの事業環境に大きな影響を与えます。
上記は、敢えて企業に対する当面の影響は何かという整理をしましたが、「米中のいざこざの影響が出ている」というような捉え方はしてはならず、日本の国家安全保障の問題であり、今後の国際関係・国際ルール・国際ビジネスの大変化の前兆と捉えるべきだと考えます。(いや本当です。)
すぐに行うべきこと
技術や情報の管理体制の見直し・強化。
地政学リスク・経済安全保障の情報を収集・分析し、事業リスクとして評価し戦略に反映する体制・組織を構築すること。
長期的な対応
(業種によりますが)キーとなる独自技術の開発。
技術秘密の保護を念頭に、開発部門や社内の組織・体制の見直し
必要な法改正の政府への提言
経済安全保障への対応を検討されている企業のご担当(準備チーム等)に対して、下記のご支援ができると考えています。
米中の戦略の分析等の講義を含む基礎知識習得の支援
管理体制構築支援・アドバイス
その後の情報提供